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ごみ屋敷状態になってしまったアパートの一室!大家・管理会社にできること

賃貸アパートやマンションの大家さん、管理会社にとって、隠れごみ屋敷は対処の難しい問題です。ごみ屋敷というと戸建て住宅のイメージがありますが、今は外部からはなかなかわからない賃貸物件の隠れごみ屋敷が増えてきています。賃貸物件の隠れごみ屋敷も、戸建て住宅のごみ屋敷のように、近隣に多大な迷惑を被る存在です。オーナーサイドとしては早急に対処したいところですが、法律の壁もあり、できることは限られています。

この記事では、賃貸物件の隠れごみ屋敷について、対応を含めて、オーナーサイド向けに解説しています。所有する物件のごみ問題にお悩みの方は、ぜひ読んでみてください。

隠れごみ屋敷がアパートやマンションに増加

 

冒頭で触れたように、賃貸アパートやマンションに、ごみで埋め尽くされている部屋「隠れごみ屋敷」が増えています。集合住宅では、近所づきあいがあまりなく、生活サイクルも人それぞれ異なるため、「外からはまったくわからないけれども内部はごみだらけ」という部屋が生まれやすいのかもしれません。

 

管理人が常駐しているアパートやマンションなら通常、分別さえしっかり行えば、いつでもごみ置き場にごみを出せるので、なぜためこんでしまうのか理解に苦しむ方も少なくないと思います。しかし、ごみをためこんでしまう原因は多岐にわたり、住人が単になまけものだから隠れごみ屋敷が形成されるわけではありません。生活苦、心の病気、死別など、精神的なストレスが原因になっていることが多いようです。

 

しかし、だからと言って、所有する物件がこのような隠れごみ屋敷になってしまったらたいへんです。オーナーサイドとしては、部屋がごみ屋敷になる前に異変を感じ取る以外に、ごみ屋敷化を防ぐ手段はありません。定期的にアパートやマンションを訪れ、なにか変わったことがないか確認しておくことは、地味なようですが重要です。

 

 

隠れごみ屋敷はアパートやマンションの大きなリスク

アパートやマンションの所有物件が人知れずごみ屋敷になってしまうと、「害虫」「悪臭」というリスクがあるだけではなく、火災のリスクも著しく増加します。隠れごみ屋敷は、所有する物件だけの問題ではなく、近隣に住む人にもリスクです。問題が長期化し、なかなか解決できないと、ほかの入居者が出て行ってしまい新たな入居者を探すことも難しくなってしまいます。

 

害虫や害獣の発生リスク

 

部屋の中にごみがためこまれはじめると、それに伴いハエやゴキブリ、さらにはネズミなどの害虫や害獣が発生しはじめます。これらはごみ屋敷の中に留まらずに出入りを繰り返すため、近隣に住む人に大きな悪影響を与えます。これらは一度発生してしまうと、どんどん増えていってしまうため、元を絶たないかぎり、駆除することは困難です。

 

悪臭の発生リスク

 

ごみ屋敷のごみの中には、多くの場合、生ごみが含まれています。だからこそ、害虫や害獣を引きつけるのですが、当然、生ごみがあれば腐敗しますので悪臭を発します。とくに気温が上がる夏場の悪臭はさらに強烈です。近隣に住む人たちは、悪臭のために窓も開けられず、洗濯物を外干しすることすら難しい状況になります。

 

火災のリスク

 

ごみ屋敷にためこまれるごみの多くが可燃性のごみです。住人が料理もせず、喫煙もせずに暮らしていたとしても、このような部屋には火災のリスクがあります。ご存じの方も多いと思いますが、ほこりやごみの積もったコンセントから出火する「トラッキング」という現象による火災は普通の住宅でも発生しますが、ごみ屋敷ではさらにその発生リスクが高くなります。

生ごみに引き寄せられたネズミがコンセントをかじることで火災につながることもあります。

火災が発生してしまうと、ボヤ程度でも修復にはお金がかかります。万一、犠牲者が出てしまうと、今後、入居を希望する人はほとんどいなくなってしまうでしょう。これではオーナーサイドは大打撃です。

 

アパートの隠れごみ屋敷大家管理会社にできることとできないこと

賃貸しているアパートやマンションの部屋が隠れごみ屋敷になってしまった場合、大家さんや管理会社はどんな対応をとればいいのでしょうか?賃貸物件の場合は、いくらオーナーサイドといえども、できることは限られます。ごみ屋敷の住人に対してオーナーサイドができることとできないことをご紹介します。

 

すぐに退去させることは不可能

 

アパートやマンションの部屋を隠れごみ屋敷にしてしまった住人は、当然のことながら賃貸契約に反する行動をとっていますが、だからと言って、すぐに住人を退去させることはできません。借り主は、借地借家法という法律により、物件に住む権利を保障されているからです。

 

もちろん、オーナーサイドとしては、契約に反する行動をしている住人に退去を求める理由があるのですが、厄介なのは、退去や更新を求める場合、法律で定められた事由に該当することを証明しなければならないこと。

 

ごみ屋敷の場合、「信頼関係の破綻」が退去を求める事由に該当しますが、これを証明することが困難です。なぜかというと、繰り返しごみの撤去を求めるなど、長い間、信頼関係を破綻に導く行為が続かなければ、この証明にならないからです。

 

そのため、隠れごみ屋敷の住人をすぐに退去させることは、不可能だと言わざるを得ません。

 

張り紙もだめ

 

お隣に住む人などから苦情が来ても共有部からは内部の様子をつかめず、住人に確認をとりたくてもとれない状態だと、思いつくのが「張り紙」です。しかし、ごみ屋敷であることが確実ではない以上、このような行為は名誉毀損に該当するおそれがあるので、絶対にやってはいけません。張り紙をすると、ほかの人の目にも入ってしまうため、住人とコンタクトをとるのであれば郵便を使ってください。あとで少し触れますが、内容証明郵便を利用することにより、状態の確認、ごみの撤去要請などを行った証拠とすることができます。

 

ごみを勝手に捨ててはだめ

 

ごみ屋敷であることが確実でも、大家さんや管理会社が住人のいないときにごみを捨てることはできません。貸している部屋をごみ屋敷にされているのに理不尽のようにも思えますが、そのごみ自体、住民の所有物と考えられるため、住人の同意がないままに捨ててしまうと、住人の権利を侵害することになってしまいます。ごみ屋敷の住人が亡くなるなど、すでに所有者がいないことがわかっている状態であっても、賃貸契約を解消してからでないと、大家さんといえどもごみを捨てることはできません。

 

家賃の支払いが滞っていてもライフラインを止めてはいけない

 

貸している部屋を隠れごみ屋敷にされたうえ、家賃も支払われていない状況になると、大家さんとしては「なんとかしなければならない」でしょう。明らかな契約違反であり、法律にも反する行為ですから、なんらかの対抗措置をとりたくもなりますが、これもやってはいけません。このような行為を「自力救済」と呼び、これも法律に反する行為です。ライフラインを止めるなどの行為が自力救済に該当します。怒りを覚えていても、決して感情的に行動してはいけません。

 

繰り返しお願いしても片付けない場合は契約を解除できる

 

隠れごみ屋敷の住人に繰り返しお願いしても、ことごとく無視されてごみがためこまれた状態が改善されない場合は、警告としてさらに内容証明郵便を送付します。内容証明には、ごみの撤去期限を記し、この日までにごみを撤去しないのであれば、「賃貸契約を解除する」という形で通告します。この警告にも応じず、そのまま部屋に居座るようなら「不法占拠」ですから、警察に通報してください。

 

アパートの隠れごみ屋敷!大家・管理会社の正しい対応

アパートやマンションの所有物件がごみ屋敷になってしまった場合、ごみの撤去を依頼しても、そのとおりに動いてくれるとは限りません。ごみ屋敷の住人の多くは依頼や警告を無視し、そのまま居座ろうとします。このような場合は、部屋の引き渡しを訴訟により実現することを考えなければなりません。その対応の流れをご紹介します。

 

ステップ1文書、もしくは口頭で注意喚起

 

部屋の内部に大量のごみがあることがわかったら、そのごみを撤去するように、文書、もしくは口頭で注意します。

 

ごみの放置がどんどんエスカレートして、共用部にまでごみが置かれるようになったらたいへんです。住人が行動を起こさないようなら、期日をしっかり定めて、行動をさらに促してください。

 

住人が片付けようとしているけれども、なんらかの問題から行動を起こせない場合は、業者を紹介してもいいでしょう。

 

オーナーサイドから起こした、たとえば、口頭での注意喚起などの行動についても、裁判のときに有利に働くので、その内容と日時の記録を残しておくことをおすすめします。

 

ステップ2内容証明の送付

 

口頭や書面による注意を行っても住人が行動を起こさない場合は、内容証明郵便を送付します。内容証明郵便は、訴訟になったときに証拠としての能力を持つ、日本郵政がその内容を証明する郵便です。内容証明郵便には、ごみを期日までに撤去する旨を記入します。

内容証明を送付したあとは、住人も行動を起こさないと、将来的に部屋に住みつづけることはできなくなります。

 

ステップ3自治体に相談

 

内容証明を送るまでに至った場合は、所有する物件にごみの問題が発生していることを自治体に相談してかまいません。ごみ屋敷は各地で大きな問題になっていて、指導だけではなく、時間はかかるものの強制的にごみの撤去が行われた事例も多くあります。自治体により対応は異なりますが、ごみ屋敷に関する条例があり、相談窓口が設置されているようなら、内容証明を送付した段階で相談してみましょう。

 

ステップ4それでもだめなら訴訟提起

 

内容証明を送っても問題が解決しないのであれば、訴訟を起こして部屋を明け渡してもらうよりほかありません。地域を管轄する裁判所に部屋の明け渡しを求めて訴訟を起こします。和解のための調停が行われ、問題解決に至ることが多いようです。

 

アパートが隠れごみ屋敷に!善管注意義務について

 

賃貸契約を結ぶと、物件の借り主は善管注意義務を負うことになります。ごみ屋敷の問題とも関係がある善管注意義務について、最後に少しお話をしておきます。

 

善管注意義務とは

 

善管注意義務とは、建物のような「特定物」の取引を行う際に、特定物を引き渡された側(ここでは借り主)が、特定物を「善良に管理して使用しなければならない」とするもので、民法で規定されています。かんたんに言えば、「部屋を借りたら退出の際に良好な状態で明け渡す」ということです。

 

賃貸物件の場合、壁に釘を打つなどの行為を禁止していることが多いのですが、まさにこれをおこなってしまうと、善管注意義務に反することになってしまいます。

 

善管注意義務に反する隠れごみ屋敷

 

釘程度でも善管注意義務に反するのであれば、ごみ屋敷が善管注意義務に反することはまちがいありません。隠れごみ屋敷の借り主には善管注意義務があるため、適切に対応すればオーナーサイドが不利になることはないのですが、部屋で借り主が孤独死するなど難しい状況になると、オーナーサイドが大きな損害を被ることもあり得るので、損害をカバーする保険への加入も検討しましょう。

 

まとめ

アパートやマンションの一室がごみで埋め尽くされる隠れごみ屋敷について、大家さんや管理会社にできることとできないことを紹介しました。今は問題に直面していなくても、これから自分にも降りかかる可能性のある問題として、認識しておくことをおすすめします。

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