どんなビジネスにおいてもトラブルは発生する可能性があります。遺品整理のビジネスにおいてもトラブルは発生しており、その多くは「支払い」に関するものです。この記事では、遺品整理で発生しやすいトラブルについて紹介しています。遺品整理の契約とクーリングオフについてのお話もしているので、ぜひ参考にしてください。
遺品整理の現場で発生しているトラブルの件数
2018年に行われた独立行政法人国民生活センターの調査によると、2017年度の遺品整理サービスに関連するトラブルの相談件数は105件でした。
この数字はピークだった前年の114件よりも減っており、2014年と2015年の相談件数も109件、90件なので、だいたい横ばいだと考えていいでしょう。
しかし、やはり年間に100件前後トラブルが発生しているわけですから、業界としても黙って見ていられる数字ではないでしょう。
遺品整理の現場でトラブルが発生しやすいのはなぜ?
遺品整理の現場でトラブルが発生しやすい理由をかんたんに説明することはできません。ただ、遺品整理という作業もサービスも、そう何度も利用するものではないということにヒントがあると考えられます。
日常的にサービスを提供している遺品整理業者にとってはよく知っていることでも、依頼者はほとんどが初めてサービスを利用する方です。日常的に利用するサービスのことなら依頼者もよくわかりますが、初めての、しかも家族が亡くなったという状況で、サービスのすべてを理解することはかんたんではありません。
遺品整理のサービスは、ご遺族にとって利用価値の高いサービスであることはまちがいありません。そのため、トラブルに巻き込まれないためには、前もってある程度の知識を手に入れて武装しておくことが大切です。
遺品整理の現場で発生しているトラブルの傾向
遺品整理の現場では、以下のようなトラブルがよく発生しているようです。トラブルには、業者と依頼者の間のトラブルのほか、遺族間のトラブルも含まれます。
見積もりどおりの料金ではない(追加料金の発生)
遺品整理の作業を業者に依頼する場合、事前に見積もりを依頼して正確な料金を出してもらったあとで契約を結びます。しかし、作業の当日になって、この見積額に料金を上乗せしてくる業者が存在しているようです。これでは事前に見積もりを依頼した意味がありませんが、多くの場合、正式な見積書自体が発行されていないことが多いようです。
見積もりのときは「5万円」と言っていたのに、作業が終わったら「廃棄物が多かったので8万円になりました」などといともかんたんに言ってのけます。
これは悪徳業者のやり方であり、大多数の業者はこんなことはしません。あまりにも安い料金を提示してくる業者に依頼してしまうと、このようなトラブルに巻き込まれてしまうことが多いようですが、その前に見積書は必ず発行してもらうことが何よりも重要です。
高すぎる料金
あまりにも高い料金を支払ってから相場を知り、困った挙げ句に関係機関に相談するパターンです。利用者が自ら探して決めた遺品整理業者ではなく、賃貸物件がらみの不動産業者などをとおして紹介された業者を利用すると、このような高額請求のトラブルがよく起きているようです。業者としては、マージンがとられるためにその分を上乗せしているつもりなのかもしれませんが、度を超した額の上乗せをするのは、急いでいる利用者を最初からカモと考えている悪意のある業者のやり方です。
遺品整理業者を利用するのであれば、複数の業者に見積もりを依頼するなどして、相場を把握することがとても重要です。
遺品の買い叩き
遺品整理の際は、遺品に含まれる高額資産以外のニーズがある品を業者に買い取ってもらえます。しかし、この際に相場よりも安く買い叩く業者が存在します。
本当はもっと価値がある品なのに、ご遺族が知らないのをいいことに買い叩くことは、優良業者にはあり得ないことです。
盗難
遺品整理では、作業の最中に金目の物が見つかることがよくあります。ご遺族から重要書類や金品の探索を依頼されていない場合でも、高額の「へそくり」が見つかることはあります。高級腕時計や貴金属、宝石などは小さく、盗もうとすればかんたんに盗めますが、プロとしてそれをやるのであれば不届き者というほかありません。
作業に立ち会えば盗難被害は防げそうですが、それでも完璧ではありません。戸建て住宅の遺品整理なら複数のスタッフがいますから、すべてのスタッフにつきっきりになることは困難です。
しかし、作業に立ち会うことでスタッフの出来心への抑止力になることはまちがいありません。
遺品整理をめぐる遺族間トラブル
遺品整理を誰が中心になって行うのか?普段から仲違いしている人たちが遺族のなかにいると、このようなトラブルが発生しやすくなります。
「あいつに主導権を握られることが許せない」
など、ほかの遺族にしてみればくだらない理由がトラブルの元になることもあるようです。
これは大げさかもしれませんが、遺族間でトラブルが発生する原因の多くはコミュニケーションの不足です。コミュニケーションがしっかりとれていないがために誤解が生じてしまいます。遺品整理をめぐる遺族間トラブルを避けるためには、遺族間でコミュニケーションをとりリーダーを決め、そのリーダーを中心に作業を進めていくことが大切です。
遺品整理を前に遺族間で話し合いをもつ際は、以下のポイントを押さえておきましょう。
相続について
このあとに紹介する相続トラブルを避けるために、弁護士や司法書士などの専門家に相談します。相続の有無を確認するとともに、遺品整理の流れも確認することができます。
遺品整理のデッドライン
遺品整理をいつまでに済まさなければならないのか、そのデッドラインを話し合いにより決めます。賃貸物件の場合はなるべく急いで整理を終わらせないと、家賃を払い続けることになってしまいます。
遺品整理の方法や予算
遺品整理を遺族だけで行うのか、業者に依頼するのか確認します。これを決めるには家の規模や物量を考慮する必要がありますが、ご遺族だけで遺品整理できる家は限られます。デッドラインのことも考慮に入れて検討してください。
相続トラブル
遺族間のトラブルでもっとも発生しやすいのがこの相続トラブルです。故人が生前から遺言書や財産目録を準備して、相続時にトラブルが発生しないように配慮してくれていればいいのですが、それでも起こりうるのが相続トラブルです。相続トラブルを避けるには、弁護士や司法書士などの専門家への依頼が効果的です。
遺品整理の契約にクーリングオフは適用される?
訪問販売において消費者を守るルールとして機能しているクーリングオフ制度。
「一度契約したけれども、よく考えたらそんな高価な商品を購入する余裕なんてないからキャンセルしよう」
このように契約の解除や撤回ができる制度です。
訪問販売のほか、エステや美容整形などの「特定継続的薬務提供」、業者が訪問して物品を買い取る「訪問購入」、マルチ商法などの「連鎖販売取引」がクーリングオフの対象になります。
遺品整理は、作業現場を訪問して見積もりを提示するため、一般的には訪問販売に該当します。訪問販売のクーリングオフ可能期間は8日ですから、この間にクーリングオフを申し出ればキャンセルすることが可能です。
クーリングオフ制度により消費者は手厚く保護されています。契約をした翌日に作業がすでに終わり、支払いが終わっていたとしても、消費者はクーリングオフを申し出ることができます。
ただし、契約時の状況によっては訪問販売に該当しない場合もあるので、不明な点はお住まいの自治体などが設けている消費生活センターに問い合わせることをおすすめします。
遺品整理の契約を解消するためにクーリングオフを申し出る流れ
事情によりすでに交わした契約を解消する場合、まずは地域の消費生活センターや国民生活センターに相談してください。相談窓口に電話をすれば、クーリングオフが適用可能かどうかわかります。
もしもクーリングオフが適用できないとわかっても、次善策を教えてくれるのでぜひ相談することをおすすめします。地域の相談窓口がわからない場合は「188」の消費者ホットラインに電話をかければ、近くのセンターに取り次いでくれます。
相談後は内容証明の送付
地域の相談窓口でクーリングオフが可能なことを確認したら、書面にて内容証明を遺品整理業者に送付します。記録に残すことが目的のため、書留で送付しても問題ありません。書面は必ずコピーして、郵送の控えといっしょに保管してください。
なお、書面には契約年月日と通知年月日のほか、購入したサービスの名称、業者と担当スタッフの氏名、金額、契約者氏名と連絡先を記入します。
カード会社にも通知
遺品整理のサービスにはまとまったお金がかかることも多いので、クレジットカードで料金を支払うことも多いと思います。この場合は、クーリングオフを申し出たことをカード会社にも伝えておかなければなりません。カード会社側では、カードのユーザーが連絡をしないと、クーリングオフをしたことがわからないことがあります。
遺品整理業者に送付した書面のコピーとカード取引の詳細を、やはり内容証明郵便や書留でカード会社に送るといいでしょう。
まとめ
遺品整理のトラブルについて紹介したので、少し心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、問題のある業者がたくさん存在しているわけではありません。経験と知識を豊富にもつ遺品整理士が中心になって作業をしている業者もたくさんあります。
消費者は、クーリングオフ制度により手厚く保護されています。ご遺族にとって負担の重い遺品整理という作業を、親身になってサポートできるのも遺品整理業者だけです。
TSUNAGUでも、ご遺族の皆様に寄り添ってサービスを提供することを心がけています。遺品整理のことでわからないことがある方は、ぜひご相談ください。
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