不動産オーナーにはさまざまなリスクがあります。なかでも、少子高齢化社会の問題が深刻になっている今、大きなリスクになっているのがアパートやマンションなどでの孤独死の発生です。もしも所有する不動産で孤独死が発生してしまったらどう対応すればいいのでしょうか?この記事では、不動産オーナーが直面する可能性のあるリスク「孤独死」への対応について説明しています。不動産オーナーの方はぜひ読んでみてください。
アパートで発生する孤独死・増える孤独死
コロナ禍以降、人々の生活は変わり、人との関わりが少なくなっていることは、多くの人が感じていることだと思います。独居高齢者だけではなく、現役世代の若い人たちのなかにも一人で暮らしている人は多く、悲しいことに自ら死を選ぶ人も増えているようです。
このような世の中は、アパート経営をしているオーナーにとってはリスクでしかありません。そのため、このリスクに対処するための準備をしておくことはとても重要です。
孤独死の定義
孤独死は、独居している人が、病気や自殺など、何らかの原因で誰にも気づかれることなく亡くなることです。孤独死という言葉自体は、少子高齢化社会が訪れるかなり前からあったようですが、もう少し説明を加えると、亡くなってから発見までに時間がかかっていること、そして、人はたくさんいるのに人同士の関わりがあまりない都会で起こりやすいことが、孤独死の特徴だといえるでしょう。
以前は、孤独死する人の多くが低所得者で、慢性的な病気に悩まされているという特徴を持っていたのですが、先に触れたとおり、コロナ禍がさらに人と人との関わりを少なくして、人々の健康状態や精神状態に悪い影響を与えていることも、孤独死の増加につながっていると考えざるを得ません。
「孤独死が発生した場所」というデータはあまりないのですが、孤独死する人の特徴を考えると、家賃の安いアパートは孤独死が発生しやすい条件がそろった物件だといえるでしょう。
孤独死を防ぐためにオーナーができる対策
高齢者の入居は断っているというアパートオーナーも多いようですが、独居高齢者だけではなく、現役世代にも孤独死する人が増えている今、それが確実な孤独死対策になるとはいえません。単身世帯は今後も増えていくため、オーナーは孤独死を身近な問題と考えて対策をとらなければならないでしょう。
まず、以下の事実をアパートオーナーは認識しておく必要があります。
・孤独死は老若男女問わず起こりえる(60歳未満が全体の4割)
・若者の死因は自殺が多い
・家族のつながりが希薄になり、第1発見者が管理者や警察になることが多い
このような傾向を考えると、アパートオーナーだけで対処することは困難です。官民挙げて、孤独死を防ぐための試みは行われていますが、アパートオーナーにできることは、現状、入居者を選ぶことしかないのかもしれません。
参考: 日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会 第7回孤独死現状レポート
住人が亡くなったときの対応
所有するアパートで孤独死が起こってしまった場合、第1発見者になる可能性が高いのは管理会社やオーナーです。家賃の滞納など、異変に気づきやすいことが、管理会社やオーナーが第1発見者になる可能性が高い理由かもしれません。ここからは、住人の異変に気づいたときにオーナーがとるべき対応について説明します。
住人の異変を認知したら、まず警察へ通報し、住人の家族に連絡をとってください。害虫や異臭の発生などに気づいたほかの住人が、管理会社やオーナーに連絡してくることが多いので、警察に立ち会いを依頼して、部屋の状況を確認してもらいましょう。同時に住人の家族に連絡します。
孤独死が起こってしまった部屋の原状回復は、相続人に依頼することになります。警察から現場への立ち入りが許された時点で、すぐに作業を始めてもらいましょう。孤独死した人のご遺体は、発見まで数日程度と比較的早く発見された場合でも、腐敗が進行しているので、特殊清掃が必要です。
亡くなられてから相当な時間が経過している場合は、特殊清掃の作業も困難を極めます。特殊清掃では、体液などの汚れを取り除くだけではなく、現場にしみついた臭いを取り除く作業も行いますが、この脱臭作業を何度も繰り返さなければならないこともあります。状況によってはリノベーション級の大がかりな作業をしなければならないこともあるので、相続人がいないケースに備えて、保険に加入するなど、対策を考えておきましょう。ちなみに、相続人全員に相続を放棄されてしまった場合でも、彼らに部屋の原状回復を求めることは可能です。ただし、それに応じてくれるかどうかは未知数です。
孤独死された人の死因によっては、損害賠償を請求できることがあります。自殺が死因だったケースです。自殺の場合、一定期間、その部屋を賃貸することはできないため、オーナーや管理会社には「家賃収入が入らない」という損害が発生します。そのため、相続人、もしくは連帯保証人と話し合いの場を持ったうえで、損害賠償を請求可能です。
なお、自殺以外の自然死や事故が死因とされた場合は、損害賠償を請求することは不可能です。
特殊清掃による部屋の原状回復が完了したら、相続人に故人の持ち物を整理してもらいます。孤独死の場合は、特殊清掃の流れで故人の持ち物を整理するのが一般的です。
家賃や管理費などの精算を行います。住人が亡くなっても、契約自体、相続されるので、物件の明け渡しまでは家賃が発生します。
相続放棄されると家賃を請求できない
住人が孤独死しても、相続人がいれば家賃を請求できることは、ご説明したとおりです。しかし、相続を放棄されてしまうと、家賃を請求できなくなってしまいます。
アパートオーナーや管理会社は、相続人の対応によってしか動くことができません。相続人が決まり、部屋を解約した場合は、契約に則った形で家賃を請求することが可能です。遺産分割協議の前で、相続人が複数存在する場合は、すべての相続人がそろわないと手続きができないことに留意しましょう。遺産分割協議後であれば、協議により決められた単独の相続人と手続きすることが可能です。
孤独死発生時の物件オーナーや管理会社のリスク
物件オーナーや管理会社には、相続人全員に相続を放棄されてしまうと、原状回復費用を自ら負担しなければならないリスクがあります。
原状回復の費用負担
原状回復の費用負担については、国土交通省がガイドラインを出しており、孤独死が早い段階(遺体が腐敗していない状況)で見つかった場合は、オーナーと住人(相続人)の両者が費用を負担、死から時間が経過(遺体が腐敗している状況)している場合、オーナーや管理会社は、相続人、または連帯保証人に原状回復の費用を請求できることになっています。
国土交通省のガイドラインは、原状回復に関わるトラブルが多く発生していることから、そのトラブルを未然に防ぐために作られました。しかし、そのガイドラインにもあるとおり、あくまでも負担の割合の基準を示しただけであり、実際、何の法的拘束力もありません。
先ほども触れたとおり、相続放棄された場合でも原状回復の費用を請求できますが、払ってくれるかどうかはあくまで相手次第なのです。
参考:国土交通省
賠償請求は困難
所有するアパートで孤独死が発生すると、オーナーは相応の損害を被ります。部屋は事故物件になってしまいますから、入居者が見つかりにくくなり、家賃を下げなければなりません。一定期間、部屋を貸せない状況になれば家賃も入ってきません。場合によっては、さらなる工事をしなければ、部屋を貸せないということも考えられます。
こうなると、オーナーとしては考えたくなるのが賠償請求ですが、これは先ほども触れたとおり、死因が自殺だったとき以外、請求することは不可能です。自殺は、自らの意志で行うことなので、「故意」に当たる可能性があるため、認められれば損害賠償を請求できます。故意や過失は、損害賠償を請求する際の条件です。
自然死の場合は、亡くなられた住人の故意でも過失でもないので、損害賠償請求の条件を満たしません。
告知義務
オーナーにとって頭が痛い告知義務。所有するアパートの部屋で孤独死が発生した場合、次に募集をする際、告知義務が生じることがあります。
アパートオーナーの皆様には説明する必要はないかもしれませんが、一応、触れておくと、損害賠償請求できる自殺が死因であった場合は、次の募集の際に告知義務が生じます。自然死の場合、告知義務は発生しません。
孤独死が起きた部屋のように、特殊清掃による原状回復が必要な部屋であっても、自然死は自然死なので、告知の必要はないというのがガイドラインです。
しかし、自殺の場合は、多くの人が気にします。自殺があった部屋に住もうという人はまれです。このように心理的瑕疵のある物件については、オーナーにそれを告知する義務があるとされ、慣例的には3年ほどの間、告知することになっています。
ただし、今のところ、告知義務は法律で定められているものではありません。
原状回復にかかる費用
孤独死現場の原状回復は、特殊な技術や薬品を用いるクリーニング方法「特殊清掃」により行う必要があります。死から見つかるまでに時間がかかったご遺体は、特殊清掃業者であってもトラウマになりそうなほどの状態になっていることがあり、作業は困難を極めます。ここからは、この特殊清掃による原状回復や遺品整理などにかかる費用についてお話しします。
特殊清掃の料金(相場)
現場の状況、また作業の内容により、特殊清掃の料金は異なるため、ここではサービス別に目安となる料金をご紹介するにとどめます。
サービス |
料金 |
特殊清掃(床) |
30,000円~ |
特殊清掃(バスルーム) |
30,000円~ |
オゾン脱臭 |
30,000円(日) |
除菌・消臭 |
10,000円~ |
人件費 |
20,000円(人) |
遺品整理の料金
TSUNAGUでは、以下の料金体系で遺品整理の作業を請け負っています。
間取り |
料金(作業時間) |
1K |
30,000円~(1~2時間) |
1LDK |
65,000円~(2~3時間) |
2LDK |
98,000円~(3~5時間) |
遺品整理の料金には、作業後の清掃、遺品の仕分け、貴重品や重要書類の探索、遺品の買取、遺品の回収、合同供養、設備の取り外し作業が含まれています。
孤独死の損害額について
日本少額短期保険協会・孤独死対策委員会の第7回孤独死現状レポートでは、孤独死が起きた際に発生した損害額についてのデータも公開しています。それによると、原状回復にかかった費用の平均損害額は約38万円、最大損害額は約455万円でした。
残置物の処分(遺品整理)にかかった額の平均は約24万円、最大損害額は約178万円でした。
所有するアパートで孤独死が発生すると、これだけ大きな損害をオーナーが被ることになってしまうかもしれません。
やはり不測の事態に備え、オーナーも入居者も、孤独死の損害をカバーしてくれる保険に加入する必要があるでしょう。
孤独死に備える保険
アパートオーナーは、孤独死により発生した原状回復費用などを、場合によっては自ら負担しなければならないことがあります。リスク以外の何物でもありませんが、孤独死により発生しうる損害をカバーするための保険も販売されています。保険には、オーナーが加入する家主型の単独保険と、入居者が加入する特約保険があります、
オーナーが加入する孤独死保険は、入居者が孤独死した際にオーナーが被った損失を補償してくれる保険です。1部屋単位で加入する必要がありますが、原状回復費用、失った家賃収入、遺品整理の費用が補償されます。
入居者が加入する孤独死保険は、相続人が被る損失を補償してくれる保険です。入居時に加入する必要があり、原状回復と遺品整理にかかる費用が補償されます。
まとめ
孤独死は、日本社会の高齢化だけが原因になっている事象ではありません。独居高齢者が占める割合は多いのですが、若年層、働き盛りの40~50代の孤独死も増えてきています。所有するアパートで孤独死が発生してしまうと、オーナーにはその損害をすべて被ることになるリスクがあることは否定できません。そのため、孤独死保険を筆頭とする万全な対策をとり、リスクに備えましょう。
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