日本社会で今、大きな問題になっている「孤独死」。孤独死は、亡くなった方のことを考えると非常に悲しいものがありますが、実はそれだけではなく、孤独死の発生した現場は、一般の方であれば直視できないような状態になっており、そのクリーニング作業(特殊清掃)は困難を極めます。この記事では、この特殊清掃について、業者に依頼しなければならない理由などを含めて解説しています。孤独死の問題に関心を持っていただけるきっかけになれば幸いです。
特殊清掃を業者に依頼する理由
孤独死は独居高齢者だけの問題ではありません。新型コロナウイルスの世界的大流行により、多くの人が職を失い、友人や家族との関わりを絶ち、そんな若者のなかには、自殺を選ぶ者もいるほどです。もちろん、独居高齢者の孤独死は多く、孤独死のリスクが高いことはまちがいありません。しかし、今の世の中においては、どの年代に属する人であっても孤独死のリスクがあることを忘れてはならないでしょう。
孤独死が発覚するのは死後数日程度と、比較的早く、多くの場合、近親者によって見つけられることが多いのですが、それでも、遺体の腐敗は始まっています。人が亡くなると、そのご遺体の腐敗はすぐに始まり、血液や体液などが床材や壁材に染みこみ、同時にその悪臭も染みこんでしまいます。まれに自力で孤独死が発生した部屋を片付けることを考えるご遺族の方もいらっしゃるようですが、それは最初からむりなことだとお考えください。
詳しく描写することもはばかられるような孤独死が発生した現場を、クリーニングして原状回復できるのは、孤独死現場や事件現場などの清掃実績を持つ専門の特殊清掃業者以外にありません。自力でクリーニングをして、たとえ汚れを取り除けたとしても、染みこんだ悪臭を取り除くことは不可能です。
特殊清掃業者は、専用の薬剤や機材を使用しているからこそ、孤独死の発生した現場でもきれいな状態に戻すことができます。以下に、孤独死現場の清掃を専門業者に依頼する理由をまとめてみました。
目に見えない汚れがあるから
孤独死の現場は、ご遺体からの体液などにより大変な状態になっています。目に見える汚れだけではなく、目に見えない病原菌などが現場のどこかに存在していることも考えられます。そのため、業者は目に見える汚れだけではなく、現場のあらゆる場所をクリーニングして、害虫や害獣が発生していればこれらを駆除し、その後、徹底的に消臭・消毒・除菌作業を行います。このように特殊な現場をきれいにして元に戻せるのは、特殊清掃業者以外にありません。
特殊清掃業者のスタッフは、防護服を着用したうえで作業を行います。一般の方では、このような装備をそろえることも難しいため、見えない病原菌などが存在していると、感染するリスクもあります。
悪臭への対策が難しいから
体液の汚れを取り除くことも非常に困難な作業ではありますが、現場に染みついた悪臭を取り除くことは、さらに困難です。腐敗したご遺体に端を発する悪臭は、放っておいても消える臭いではありません。消臭作業をして一度消えたように感じられても、その後繰り返し作業しないと臭いが消えない現場もあります。それほど消臭作業は難しいのです。
また、特殊清掃の作業中は、窓を開けて換気することなどもってのほかなので、業者は完全防備に身を包み、締め切った空間で作業を行います。孤独死現場の悪臭は、窓を開け放ってしまうと、近隣に住む人でもはっきり感じられるほど強烈な臭いなので、もしも身近な人が孤独死してしまったら、早急に特殊清掃を依頼する必要があることを心に留めておいてください。
精神的ダメージがあるから
孤独死の現場は、特殊清掃業者のスタッフであっても目を背けたくなるような状況になっていることがあります。いくら身近な人のご遺体でも、一般の方が現場とその状況を見て、精神的ダメージを受けないことは、控えめに言っても「あり得ません」。
孤独死現場の特殊清掃・料金の目安
特殊清掃にはお金がかかります。通常のハウスクリーニングとは比較になりません。現場の状況にもよるので一概に言うことは難しいのですが、清掃範囲が狭い場合でも10万円程度はかかると考えてまちがいありません。何しろ、特殊清掃現場には、腐乱したご遺体や悪臭だけではなく、悪臭に引きつけられた害獣や害虫が発生していることもめずらしくありません。特殊清掃では、現場の状況に応じて、清掃、消臭、害虫・害獣の駆除、そして消毒や除菌作業を行います。作業が増えれば、その分、お金もかかるということです。ちなみに、「日本少額短期保険協会孤独死対策委員会」の「孤独死現状レポート(2022年11月)」によると、孤独死現場の原状回復にかかった費用のへ平均額は約38万円でした。
参考:孤独死現状レポート
孤独死がおきてしまったときの対応
もしも、身近な人が孤独死したことに気づいたら、落ち着いて対応しましょう。あなたが近親者として第1発見者になった場合は、まず警察に通報します。
ご遺体の第1発見者になった場合は、落ち着いて警察に通報してください。部屋の中には留まらず、どこかほかの場所で警察の到着を待ちます。警察が来るということは、事件性の確認でもありますから、第1発見者であるあなたは現場をそのままの状態にしておかなければなりません。とにかく何にも触れず、窓を開けることも厳禁です。
警察による現場検証が行われ、その後、近親者であるあなたに連絡が来ます。ご遺体の引き取りなどの確認をしてください。
警察から許可が出たら、業者に依頼して現場の特殊清掃を行います。許可されるまで現場に立ち入ることはできませんが、孤独死がわかった段階で業者に相談しておけば、許可が出た時点で速やかに作業に入れます。
葬儀社に相談して、葬儀を手配しましょう。ご遺体の検死が行われている状態でも、葬儀の準備を進めることは可能です。通常、孤独死された方のご遺体は火葬してから葬儀を行います。
孤独死された方が住まわれていた部屋が賃貸物件の場合は、すぐに原状回復をしなければならないので、特殊清掃が終わったら、その流れで遺品を整理します。ただし、すべての相続人と話しあってから作業してください。孤独死現場にあった遺品の多くは、一部を除き廃棄処分することが多いようです。
葬儀社と打ち合わせたとおりに葬儀を執り行います。
以上が、孤独死が発生した際の大まかな対応の流れです。個々の状況により順番は異なることがあるので、あくまで参考とお考えください。
特殊清掃業者による孤独死現場の清掃手順
ご遺体が見つかるまでに時間がかかればかかるほど、孤独死現場の清掃は困難になっていきます。そのため、身近な人が孤独死したことがわかったら、警察に通報したあとの許可が下りた段階で、早急に特殊清掃を依頼してください。
孤独死の現場では、孤独死が発覚した段階で、すでに害虫や害獣が発生していることがあります。害虫や害獣は病原菌を媒介する可能性があるので、清掃作業に入る前に、まずこれらを駆除する作業を行います。扉や窓を開放してしまうと、これらが逃亡して近隣の住居に入り込んでしまうため、密室状態で作業を行います。
ご遺体から出た体液などの汚れを取り除きます。普通の清掃用洗剤で孤独死現場の汚れを取り除くことは不可能です。専用の薬剤と道具を使用して汚れを除去します。
ご遺体から出た体液は、床材や家財にも浸透してしまうため、汚れを取り除いてもなかなか臭いが消えません。現場が畳である場合は、体液が完全に内部まで染みこんでしまうため、解体するしかありません。どうしても交換できない建材の場合は、特殊な薬剤によるコーティングを行うこともあります。
床材同様、クロスに体液などの汚れがある場合は、やはり交換します。とくに汚れているようには見えなくても、悪臭が取り除けない場合は、壁だけではなく、天井のクロスを張り替えることもあります。
とにかく、現場の状況に合った最善の方法を選び、完全に汚れや臭いを取り除くことが、特殊清掃業者の役割です。
専用の薬剤を使用して、現場の防臭と消毒を行います。防臭と消毒作業は、現場の状況により、複数回に分けて行うこともあります。
すべての作業が終わると、依頼者立ち会いのうえで作業内容の確認を行います。汚れ、悪臭ともに完全に取り除かれているかどうか、細部まで確認してください。
特殊清掃業者の選び方
特殊清掃業者に作業を依頼する際は、緊急性が高いこともあり、サービスの質の悪い業者に依頼してしまう危険性が増します。急いでいてもあわてず、作業内容がわかる明確な見積りを提示する業者を選ぶことが大切です。
特殊清掃の料金は、現場を見て判断するよりほかないので、業者のホームページ上に料金が掲載されていることはまずありません。迅速に対応してくれる業者に出張見積りを依頼するのがおすすめです。事前に比較サイトを利用して相見積りをとり、業者選びに役立ててもいいでしょう。
まとめ
少子高齢化の進行がつづく日本では、孤独死は誰にとっても身近な問題になっています。コロナ禍を経験し、人々の意識や生活様式にも変化が見られるなか、人と人との関係は希薄になり、その人間関係の希薄さが、孤立して生きる人たちの数を増加させることにもつながっているのかもしれません。私たちの誰もが孤独死の問題に直面する可能性がある以上、これからは孤独死に備えることが重要です。特殊清掃や遺品整理といったサービスを提供している業者は、万が一のことが起こってしまったときに頼るべき存在です。
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